食品ロスへの取り組み

統括名誉総料理長の中村勝宏が国連食糧農業機関(FAO)の日本担当親善大使に任命されたことを一つのきっかけに、2018年より社内に「食品ロス削減プロジェクト」を立ち上げ、食材の調達から食品提供までの一連のプロセスの中で、食品ロスの発生個所を抽出し、解決策の検討を行い、生ごみの計量による削減効果の検証、宴会時の食べ残しを減らす「3010運動」の実践、食材を余すことなく活用する「もったいないメニュー」の開発、さらには食べ残しの持ち帰り「mottECO(モッテコ)」を2022年4月より導入するなど、食品ロス削減の推進や食にまつわる社会課題の解決に取り組んでおります。


  1. 東京ステーションホテル 食品ロス削減への取り組み
  2. 規格外野菜や未利用魚、地産食材の有効活用で食品ロス削減
  3. 食品ロス削減の取り組み「もったいないメニュー」の開発・展開
  4. 3010運動の推進と食品ロス削減サイクルの実践
  5. 中高生向けSDGs体験学習の開催
  6. 食べ残しの持ち帰り「mottECO(モッテコ)」の導入
  7. 「mottECO 普及コンソーシアム」令和5年度 食品ロス削減推進表彰 環境大臣賞を受賞
  8. 食品ロス削減を目指すイベント「mottECO FESTA 2023」を開催
  9. 食品ロス削減推進表彰審査委員会委員長賞を受賞 

東京ステーションホテル 食品ロス削減への取り組み

東京ステーションホテルは、食材も廃棄するまでできるだけ活用術を考えています。例えば牛脂や野菜くずなどは、きれいに手入れしソースや焼き油、出汁などの旨味として、栄養豊富な米ぬかはオリジナル焼き菓子「ロンデル」に。提供するパンのサイズを変更したところ、ほぼ廃棄ゼロになったという実績も生まれています。

食品ロス削減 取り組み一覧
2012年:牛すじの牛脂をソースや焼き油、煮汁をスープに活用
    野菜くずをスープや出汁に活用
2019年:カット済の野菜の採用により廃棄分の削減
2020年:パンをコースに合わせて小さいサイズで提供に変更し廃棄を99%削減
2021年4月:廃棄が多いとされる米ぬかを使った焼き菓子「ロンデル」を開発
2022年4月:mottECO(食べ残し持ち帰りプログラム)の導入
2022年:食品ごみの排出量を計測開始

米ぬかを使った焼き菓子「ロンデル」


規格外野菜や未利用魚、地産食材の有効活用で食品ロス削減

ホテルメトロポリタン 高崎では、様々な理由で市場に並ぶことなく農場で廃棄されてしまう「規格外野菜」など独自の仕入れルートで農家より直接買い付けを行い、宴会料理に利用するなど、当ホテルは食を扱う事業者として食品ロス削減に力を入れていました。そんな折、鮮魚のECサイトを運営する企業より、水揚げされても需要が少なく市場に出回りづらい「未利用魚」の活用について相談を受け、北海道標津町産「エゾメバル」の試作メニューを作成することになりました。

未(低)利用魚とは
市場にやって来ず利用されない魚
未利用魚とは、 形が悪かったり傷がついていたり、出荷する相当数数が揃わなかった(十分な水揚げ量がない)等の理由だけで、価値がつかず市場に出回らないもったいない魚のことです。

未(低)利用魚も食べてほしい理由
皆さんの食生活が豊かになります。色々な魚が食卓に上がると話題も増えます!未利用魚の売上げが収入になると、若者が将来の仕事になるからと仕事として漁師さんを選び、その地域に住むことにつながり地域が元気になります。また、メジャーな魚の資源を減らしにくい形にもなり、海外の魚介類が「買い負け」で買えなくなったとしても、食料として活用できる!などなど…未利用魚の利用にはたくさんの良い事があります。

未利用魚の活用

ホテルメトロポリタン高崎では通常のご宴会メニューに加えて、自社イベントなどでも未利用魚を使用したメニューを提供して参りました。
ソテーやムニエル、煮付けに天婦羅などなど…2022年度中に使用した未利用魚は約700キロを数え、一般消費者の皆さまに食品ロス削減について考えるきっかけをご提案しております。

未利用魚のメギスを使ったエスカベッシュ

  • 未利用魚のメギスを使ったベーコン巻き
    シトロン風味

  • 未利用魚のメギスを使った天婦羅

  • 未利用魚のカナガシラを使った
    ブイヤベース ア ラ マルセイユ

  • 未利用魚のシロガレイを使った蘿蔔蒸し

  • イベントでの未利用魚取材の様子

  • ロビーでは未利用魚を案内するポスター掲示


食品ロス削減の取り組み「もったいないメニュー」の開発・展開

「もったいないメニュー」とは、食材を余すことなく活用し、和洋のシェフが技巧を凝らしたホテルメトロポリタン エドモントならではのオリジナルメニューです。普段は廃棄してしまう「魚のあら」はフランス料理には欠かせない出汁やスープに、また野菜の皮や葉は、滋味深い和食や彩り鮮やかなオードブルにするなど、美味しいごちそう料理に仕立てます。
ホテルメトロポリタン エドモントでは2019年より主催者の賛同をいただいた上で、「もったいないメニュー」を実際にパーティ料理としてご提供しています。ホテルの食品ロス削減につなげるとともに、美味しい料理を食べながら食品ロスについて考えていただく機会の提供につながっています。

  • プロヴァンス風魚のスープ
    ルイユ添え

  • グラタンにした
    仔羊のアッシパルマンティエ

  • 丸ごとバナナのコンフィ

  • ラスク(リユース)

  • 京人参の皮を使った
    寒天寄せ

  • 鮪のコラーゲンつくね照り焼き
    天麩羅衣柚子皮巻き

  • パンの端生地を使用した
    パンプディング

また、家庭でできる「もったいないメニュー」レシピを公開したり、オンラインセミナーを行うなど、食品ロスや環境問題の課題に取り組むことを身近に感じていただく取り組みも実施しています。


家庭でできる「もったいないメニュー」の伝授

統括名誉総料理長の中村勝宏による、家庭でできる「もったいないメニュー」のオンラインセミナーも実施(2020年10月)


フランス料理のフルコースを堪能しながらSDGsアクション

フランス料理のフルコースを堪能しながら、SDGs アクション
「サステナブルフード エクスペリエンス」

  • 玉ねぎとベーコンのパンペルデュ
    [食品ロス削減][もったいないメニュー]

  • 信州鹿のポワレ ポルトソース
    [生態系の維持][里山保全][健康食材]

  • ダチョウのタルタルとわさびのムース
    [地球温暖化対策][飢餓撲滅][効率的な食用作物の活用]

ホテルメトロポリタン エドモントでは「サステナブルフード」を用いた本格的なフランス料理のフルコースをお召し上がりいただくことで、サステナブルな食材を身近に感じ、理解を深めることにより、日常の新たな気づきにつながるきっかけの場をご提供いたします。


さいたま市のフードロス削減の取り組みへの参画

さいたま市が事業者を巻き込んで取り組んでいるフードロス削減の取り組み「チーム Eat All」。ホテルメトロポリタン さいたま新都心直営のカフェ クロスヤードはこの取り組みに参画しております。
余った食材を冷却し、翌朝再加熱して朝食ビュッフェのキッシュの具材として活用。また、余った調味料を調合してドレッシングを開発するなど、味にはこだわりながらもフードロス削減に取り組んでおります。

  • フードロス対策メニュー キッシュ

  • フードロス対策メニュー ドリア


3010運動の推進と食品ロス削減サイクルの実践

農林水産省の食品ロス統計調査報告・外食調査によると、日本では提供された食事のうち、食堂・レストランでは約4%が食べ残されているのに対し、宴会料理の食べ残し量は約14%と3.5倍にもなります。日本ホテル(株)では宴会場をもつホテル全てにおいて、宴会時の食べ残しを減らすための「3010運動」を積極的に推進しています。「3010運動」とは、乾杯後30分、お開き10分前に「食べきりタイム」を設け、お料理を味わい残さず召し上がっていただくというものです。
また、宴会開催前の事前打ち合わせの段階から、開催当日、終了後まで、食品ロス削減サイクルを繰り返し循環させることにより、宴席料理の完食率のアップにもつなげています。


中高生向けSDGs体験学習の開催

ホテルメトロポリタン エドモントではSDGsに関する中高生向け体験学習カリキュラム(食品ロス講義/味覚の授業/テーブルマナー講習)を開発し、2022年3月にはホテルが位置する千代田区内の中学生・高校生あわせて約1,200名に受講いただきました。
食品ロスをテーマに世界と日本の現状と課題を分かりやすく解説するとともに、ホテルメトロポリタン エドモントの食品ロス削減のための具体的な取り組み事例の紹介や、私たち一人ひとりが日々の生活の中で食品ロス削減のためにできることなど、ホテルという食を扱う事業者からのリアルな情報を通じて食品ロスへの理解を深めていただきました。
また味覚の授業ではホテルシェフが講師となり、味の基本となる4要素「塩味」「酸味」「苦味」「甘味」に、第5の味覚ともいわれる「旨み」を加えた5味について学び、出汁の飲み比べや、豚肉の食べ比べなど、食への関心を培い生きる力を育む食育の体験授業を行いました。

  • 食品ロスをテーマにした講義

  • オリジナルテキストを用いて理解を深めていただきました

  • 味覚の授業(ホテルメトロポリタン エドモント 総料理長 岩崎均)

  • 出汁の飲み比べなど楽しみながら学んでいただきました


食べ残しの持ち帰り「mottECO(モッテコ)」の導入

日本ホテル(株)は、食品ロス削減の取り組みとして「mottECO(モッテコ)」を2022年4月1日より9ホテルで実施しております。
ホテルのレストランや宴会場をご利用いただいたお客さまが料理を食べきれなかったときに、ご希望があれば、環境に配慮した認証紙製の容器を渡します。お客さまご自身の責任でお持ち帰りいただくことによって、食品ロス・ゴミの削減に取り組むとともに「食べ残したものは自分で持って帰る文化」の普及と啓発を図ります。

2022年5月に、日本ホテル(株)は株式会社セブン&アイ・フードシステムズ、ロイヤルホールディングス株式会社、SRSホールディングス株式会社と4社共同で、環境省の「mottECO導入モデル事業」として採択されました。
今回採択されたのは、「パートナーシップによる mottECO 導入事業者拡大とツール普及スキームの構築、及び、業界、自治体、教育機関と連携した啓発活動による mottECO 普及促進」事業で、「食品ロス削減」という大きな社会課題に対し、事業者が mottECO 導入と拡大を通じ、競合関係を超えたパートナーシップで取り組み、その解決を図るものです。

2023年5月には、さらに本取り組みに賛同した株式会社京王プラザホテル、株式会社アレフ及び自治体として域内の飲食店でmottECO普及に力を入れる東京都杉並区が参加、共同で環境省の「mottECO 導入モデル事業」として採択されました。

「mottECO」のモデル事業に参加することにより、食品関連事業者等に対し普及拡大に寄与するとともに、異業種と連携しながら事業者側の意識と消費者行動の変化の促進に貢献していきます。

mottECO(モッテコ)とは
環境省では、消費者と飲食店の相互理解のもとで、飲食店等における食べ残しの持ち帰りをより身近な文化として広めることを目的として「NEWドギーバッグアイデアコンテスト」を開催しました。「mottECO(モッテコ)」はコンテストのネーミングの部で大賞に輝いた、飲食店等における食べ残しの持ち帰りの名称です。 「mottECO(モッテコ)」には、「もっとエコ」「持って帰ろう」というメッセージが込められています。


「mottECO 普及コンソーシアム」
令和5年度 食品ロス削減推進表彰 環境大臣賞を受賞

日本ホテル㈱をはじめ7団体が共同で推進している食品ロス削減の取り組み「自治体・事業者連携によるmottECO(モッテコ)導入、普及推進事業」は、環境省、消費者庁が主催する「令和5年度食品ロス削減推進表彰」において、計93件の公募の中から最高賞である「環境大臣賞」を受賞いたしました。
2023年10月30日に開催された「第7回食品ロス削減フードロス全国大会in金沢」においては消費者庁及び環境省主催の令和5年度食品ロス推進表彰式が行われ、mottECO普及コンソーシアムとしてブース展示を行い取り組みを紹介いたしました。


食品ロス削減を目指すイベント「mottECO FESTA 2023」を開催

日本ホテル(株)が参画する「mottECO普及コンソーシアム2023」主催の、食品ロスの削減を目指すイベント「mottECO FESTA 2023」が2023年7月24日(月)にホテルメトロポリタン エドモントにて開催されました。イベントでは食品ロス削減に取り組む省庁・自治体・企業・大学など30以上の団体が集結し、各々の取り組みを紹介する展示ブースを出展しました。

mottECOの普及拡大をテーマにしたパネルディスカッションでは、関係省庁、自治体、外食産業の関係者らとともに、佐藤進常務取締役・オペレーション部長がパネリストとして登壇し、ホテル事業者としての立場からmottECO普及拡大のための課題やその解決策などについて意見を交わしました。

また、国連食糧農業機関(FAO)の親善大使を務める中村勝宏統括名誉総料理長によるオンライン講演では、日本ホテル(株)におけるmottECOをはじめとした食品ロス削減の取り組みとその意義について、世界の飢餓問題についての視点も交えながら説明しました。
さらに、「もったいないメニュー」や「雑穀メニュー」をはじめとした食品ロス削減やサステナブルをテーマにした料理の試食コーナーも設けました。

イベントには、全体で約400名が参加し、会場内では食品ロス削減のための取り組みついて様々な提案や活発な意見交換が行われ、今後さらに事業者間の連携を深めながら、mottECOの普及を促進する大きなきっかけの場となりました。


食品ロス削減推進表彰審査委員会委員長賞を受賞

日本ホテル㈱は、㈱セブン&アイ・フードシステムズ、ロイヤルホールディングス㈱およびSRSホールディングス㈱と4社共同で推進している食品ロス削減の取り組み「mottECO事業」について、「食品ロス削減推進表彰審査員会委員長賞」を受賞しました。消費者等に対し広く普及し、食品ロス削減に効果的かつ波及効果が期待できるとして、10月30日(日)に行われた「食品ロス削減全国大会」において、環境省、消費者庁より授与されました。


日本ホテル株式会社 特別顧問 統括名誉総料理長 中村勝宏

日本人で初めてミシュランの星を獲得した中村 勝宏は、日本のフランス料理界の第一人者として、後進の育成はもとより、食育の推進、フランス料理を通じた社会貢献など、様々な活動に取り組んでおります。2017年に国連食糧農業機関(FAO)の日本担当 親善大使に就任し、食品ロスの削減や飢餓の撲滅など、SDGs達成のために精力的に活動しております。

日本ホテル株式会社 特別顧問 統括名誉総料理長
中村勝宏 プロフィール

国連食糧農業機関(FAO)親善大使
ゴブラン会会長/フランス農事功労章受章者協会 終身名誉会長/他

1944年鹿児島県出身。1970年に渡欧しフランス各地の有名店で15年に渡りプロの料理人として活躍。1979年にパリのレストラン「ル・ブールドネ」のグランシェフ時代に、日本人として初めてミシュランの一つ星を獲得。以降4年半に渡り星を維持しております。
1984年に帰国後、ホテルエドモント(現 ホテルメトロポリタン エドモント)の開業とともにレストラン統括料理長となりました。1994年同ホテル常務取締役総料理長に就任。2003年にはフランス共和国より農事功労章シュヴァリエ叙勲。2008年の北海道洞爺湖サミットでは総料理長としてすべての料理を指揮統括しました。2010年フランス共和国農事功労章オフィシエ叙勲。2015年にJR東日本のクルーズトレイン「TRAIN SUITE 四季島」の料理監修に就任(現在は料理総監修を務める)。2016年フランス共和国農事功労章コマンドゥール叙勲。2017年には日本初の国連食糧農業機関(FAO)親善大使に就任。2019年「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」選手村メニューアドバイザリー委員会委員に就任。

  • 1979年にパリの無名レストラン「ル・ブールドネ」のグランシェフになるや評判店に押し上げ、日本人として初めてミシュランの一つ星を獲得しました。

  • 2008年の北海道洞爺湖サミットでは総料理長として、各国の要人はもちろん随行員等も含むすべての料理を指揮統括しました。

  • 2003年にフランス共和国農治功労章「シュヴァリエ」叙勲。2010年に「オフィシエ」、2016年には最高位の「コマンドゥール」を叙勲。

  • 2017年に国連食糧農業機関(FAO)の日本担当 親善大使に任命されました。(写真左より、中村勝宏、FAOグラジアノ・ダ・シルバ事務局長、同じく任命された国谷裕子氏)

  • 子どもの食育の推進にも積極的に取り組み、2009年には「中村勝宏シェフのこども味覚教室(全3巻)」を刊行。小学校での出張授業なども行っております。

  • 食品ロス削減の取り組みとその意義について講演会を実施。FAOの多くのデータをもとに、世界の飢餓問題や日本の食品ロスの現状について説明しました。